「平成20年度畜産・酪農緊急対策について


 基本的考え方

 わが国の畜産・酪農の現状は、かつてない危機的状況にある。
 すなわち、生産コストが適切に価格転嫁されない中、一昨年来の配合飼料の高騰は、畜産・酪農農家の経営を直撃している。
 このような状況にかんがみ、自民党としては、畜産・酪農農家の経営に対し、緊急支援対策を実施する。

T 畜産・酪農農家の経営に対する緊急支援対策

1 酪農家支援のための緊急対策

(1) 飲用乳生産者関連対策

 第1に、都府県酪農緊急経営強化対策を実施する。平成20年度乳価は、1kg3円の値上げであるが、現在の飼料価格の高騰を折り込んだ場合、5円の値上げを確保する必要がある。
 このため、簡易な用件で生産性向上に取り組んだ酪農家に対し、乳価換算で1kg2円10銭に相当する金額の交付金を交付する。

 第2に、乳価の値上げにより飲用乳の需要が低迷した場合のセイフティネト対策を実施する。
 具体策には、国として、生産者の行う「とも補償」に対する支援や、脱脂乳の需要開発等への支援を行う。

 これら飲用乳生産者等関連対策として、新たに約110億円を確保する。

(2) 加工乳生産者関連対策
 第1に、加工原料乳補給金単価については、配合飼料価格の農家実質負担を、平成21年3月まで反映させ、現行10円55銭/1kgの単価を1円上積みし、11円55銭/1kgとする。

 第2に、加工原料乳限度数量については、最小限の削減に止め、195万トンとする。
 ただし、バター・脱脂粉乳の国際相場の上昇等に伴い加工原料乳の需給が逼迫した場合には、限度数量の外数として、最大12万トンの加工原料乳に対し、補給金単価と同額の助成を行う。
 さらに、チーズ、生クリーム、脱脂濃縮乳の増産が図られるよう、生乳需要構造改革事業を増額し、前年度比約30万トン増とする。
 これらの措置により、加工関連の生産枠を、全体としては大幅な増産となるように措置する。

2 肉用牛農家支援のための緊急対策

(1) 繁殖農家等関連対策

 肉用子牛の保証基準価格については、生産コストを適切に反映し、1頭あたり1000円から3000円引き上げる。

(2) 肥育農家等関連対策

 第1に、牛肉の安定価格について、生産コストを適切に反映し、安定上位価格を15円/1kg、安定基準価格を10円/1kg引き上げ、市場に対するメッセージを発信する。

 第2に、粗収益が物財費を割り込むなど、肥育農家の収益性が極端に低下している状況にかんがみ、肥育牛生産者収益性低下緊急対策を実施する。
 具体的には、肥育経営安定対策(いわゆるマルキン対策)を緊急に補完する形で、平成20〜21年度において、粗収益が物財費を割り込んだ場合、その6割を補填する(注)。

注)現行マルキン制度は、粗収益が家族労働費を割り込んだ場合、国3、生産者1の割合で、資金を拠出し、その8割を補填している。今回、国が、粗収益が物財費を割り込んだ分の6割(0.8×3/4=0.6)を補填することで、家族労働費と同等の支援水準を確保。

3 養豚農家支援のための緊急対策

 第1に、豚肉の安定価格を、生産コストを適切に反映し、安定上位価格を35円/1kg、安定基準価格を15円/1kg引き上げ、市場に対するメッセージを発信する。

 第2に、地域肉豚事業に係る基金を活用した緊急経営支援対策を実施する。
 具体的には、地域保証価格を70円引き上げることにより、200億円の積立金(うち生産者150億円、国50億円)を平成20〜21年度における養豚農家の経営支援に活用する。

4 畜産・酪農経営支援のための緊急融資対策

 畜産・酪農の経営支援のため、緊急融資対策を実施する。

 第1に、現在の家畜飼料特別支援金の融資限度額を倍増するとともに、活用される制度となるよう、相談の充実を図るとともに、運用・広報等に配慮する。

 第2に、畜産・酪農の生産性向上のため、個人向け補助付きリース事業を実施する。
 具体的には、個人がリースにより購入する一定の機械等について、購入費用の3分の1を補助する。

 第3に、牛・豚農家特別支援資金融通事業を実施する。
 具体的には、負債償還に支障がある経営に対し、低利融資による借換措置を実施する。また、活用される制度となるよう、相談の充実を図るとともに、運用・広報等に配慮する。

5 自給飼料基盤強化のための緊急対策

 飼料米導入対策としては、飼料米導入定着化緊急支援対策を実施する。
 具体的には、平成19年度補正予算において、10万fに対応する踏切料が容認されたことに対応し、畜産側で取り組んでいるモデル実証を全国展開、その利活用の実証に対する助成を行う事業を創設し、2万fの飼料米耕作水田について、実質10e1万3千円相当を補助する。
 なお、平成21年度以降における取り組みへの支援については、5月末までに具体的な制度のあり方についてのビジョンを策定する。

 その他、自給飼料の増産のために必要な所要の対策を実施する。

6 その他
 
 畜産・酪農の生産性向上のため、繁殖性の向上や事故率の低減のため、所要の対策を実施する。

 以上の緊急対策を措置することにより、今回決定する畜産物価格関連対策としては、合計1,871億円(前年比632億円増)を確保する。


U 追加対策の実施

 しかしながら、これらの緊急対策を実施したとしても、配合飼料に係る農家負担は、今後長期的に増大することが予想されるなど、法制度面も含め、畜産・酪農農家が希望を持つことができる追加対策を実施する必要がある。
 このため、以下の諸点について、畜産・酪農対策小委員会においては、農業基本政策小委員会との連携により、プロジェクトチームを設置するなどして、5月末を目途に集中的に検討を行い、追加対策の内容を詰め、法制度、予算等に反映させていく。

(1) 配合飼料価格安定制度及び経営安定対策に係る追加対策
 配合飼料にかかる農家負担は、今後、価格の上昇に加え、積立金負担が増大すること等が予想される。平成20年度当初予算では、通常補填基金が底をつくことがないよう、必要な対策を講じることとしているが、これに加えて、今後あるべき価格安定制度及び経営安定対策について検討を行い、抜本的、かつ、具体的な対策を策定し、実施に移していくこととする。

(2) 生産コストの適正な価格転嫁対策
 畜産・酪農が産業として成り立つためには、生産物の価格で生産コストを吸収できる仕組みを作っていく必要がある。しかし、現状では、生産コストが適切に価格転嫁されておらず、その背景として、大手量販店による不当廉売や優越的地位の濫用が指摘されている。自民党としても、実態について早急な調査を進め、法制度の見直しを含め、適正な価格転嫁のあり方について、具体的なビジョンを示し、実施に移していくこととする。

(3) 飼料米等自給飼料基盤の抜本的強化対策
 我が国は、毎年2400万トンの飼料用穀物を輸入しており、食糧安全保障の観点からも、また、畜産・酪農の経営基盤安定の観点からも、構造的な問題を抱えている。このため、飼料米等の自給飼料基盤の抜本的強化対策について早急に具体的なビジョンを示し、実施に移していくこととする。
 なお、平成19年度補正予算で措置された飼料用米の踏切料に対応する飼料米の導入定着化対策を、平成20年度は、緊急に実施する。  

平成20年2月21日